百人一首のつづき
上の句と下の句のマッチング、つづけます。
・今来むと言ひしばかりに長月の
むべ山風を嵐といふらむ。
・吹くからに秋の草木のしおるれば
わか身一つの秋にはあらねど
・山川に風のかけたるしがらみは
静心なく花の散るらむ
・誰をかも知る人にせむ高砂の
花ぞ昔の香ににほひける
・白露に風の吹きしく秋の野は
人の命の惜しくもあるかな
・忘らるる身をば思わず誓ひてし
あまりてなどか人の恋しき
もうこのあたりで十分、食傷ぎみでしょう。
後ろから組み合わせていっても、愉快なのがありますが、それらについては、みなさんでお楽しみください。
それでは、百人一首のハイライト、40番、平兼盛と41番、壬生忠見の両歌で上の句と下の句を取り替えてみます。
村上天皇ご主催の歌合わせです。あなたは、判者、左大臣の藤原実頼の役。
・忍ぶれど色にいでにけりわが恋は
人しれずこそ思ひそめしか
・恋すてふわが名はまだき立ちにけり
ものや思うふと人の問ふまで
いかがですか。両者ともすばらしいではないですか。
1000年以上後のぼんくら頭の私にだって、その美しさ、人の気もち、やさしさや、せつなさ、十分につたわってきます。
私のようなやつがれが、遊び心で歌をいじっても両歌のすばらしさは超一流であります。
どうして、あのとき、同点にしてあげることができなかったのか。私は、今でもこの40番と41番を読むときに涙が出てしまいます。
私は、忠見の歌の方が可憐で、太陽に対する月のようなけなげさを映し出し、人を恋するときのせつなさを心痛いほど感じさせていると思います。
ぜひ、私が今回やった「おふざけ」ではなく、両者の本物の歌を音読してみてください。
平成の世にすむ我々も、面接という不条理にあえて臨んでいかなければなりません。
いったい何が合格、不合格の基準になっているのか!
みなさんのご努力、紙一重などではけっしてありません。十分に合格しているはずなのです。
私自身は百人一首の歌合わせの場が大すきですし、平兼盛の歌も素晴らしいとは思います。でも、繰り返しますが、私なら「可憐な美しさ」で壬生忠見を選びます。